固定資産の減価償却をする際に、耐用年数が経過した後も1円だけ残す理由は、『その固定資産をまだ使用している事を報告書に載せるため』です。
この記事では、
簿記3級の減価償却で1円残す意味は?計算方法をわかりやすく解説
についてまとめました。
簿記3級 減価償却 1円残す意味
企業はたくさんの物を使用しながら日々の経営を成り立たせています。
中には10万円を超えるような固定資産を使用していることもあるでしょう。
減価償却とは、固定資産の取得に要した支出額(取得原価)を、各事業年度に費用として配分する事です。
言い換えると、毎期の収益を得るために犠牲となり価値が落ちた固定資産の金額を、費用として計上することで、得られた収益と対応させて適正な損益計算を行おうとするものです。
ただし一方で、事業の用に供している固定資産があることを貸借対照表に記載する義務もあり、『これだけの物を使用して事業が成り立っている』という実態を報告しなければなりません。
つまり、耐用年数が経過し、既に減価償却をし終わった固定資産でも、使用しているものがあるのならば貸借対照表に載せなければならないのです。
そこで、耐用年数が経過してもなお使い続けている固定資産があれば、1円だけ金額を残しておくことで報告書に載せ続ける事となります。
これは、『減価償却が終わった固定資産を、まだ使用しています』という情報を、報告書を見ている人に伝える意味があります。
簿記3級 減価償却 計算方法
簿記3級では、減価償却費の計算方法として「定額法」を学習します。
例えば、【期首に200,000円で購入したパソコン(備品)、耐用年数4年】の減価償却について考えてみましょう。
(なお、実務では平成19年4月1日以降に取得した有形固定資産については残存価額がゼロとなっています。)
・1年目・・・200,000円÷4年=50,000円 (非償却残高150,000円)
・2年目・・・同じく50,000円 (非償却残高100,000円)
・3年目・・・同じく50,000円 (非償却残高150,000円)
・4年目・・・50,000円-1円=49,999円 (非償却残高150,001円)
・5年目以降は減価償却はしませんが、使用し続ける限り1円で報告書に記載します。
最後に残す1円のことを「備忘価額」といいます。
この1円を消してしまうと、その固定資産が存在しない物になってしまうので注意しましょう。
簿記3級 減価償却 試験対策
簿記3級の試験において、「減価償却」は必ず出題される論点となります。
主に、第3問の決算問題の中で出題されますが、第1問の仕訳問題に出題されることもあるでしょう。
「定額法」の計算はしっかり練習して身に着けて下さい。
ただし、耐用年数の最終年度に1円だけ残して減価償却をさせる問題は、今のところ頻繁に出題されてはいません。
過去に出題されたときは、しっかりと問題文に「1円を残す事」の指示がありましたので、問題文を読んでいれば必ず気づく形で出題されるでしょう。
それよりも練習しておきたいことは、「固定資産を期中に購入・売却した場合の減価償却費の計算」です。
企業は通常、期末の決算整理として当期に使用した期間分の減価償却費を計算しますが、固定資産を当期の期中に購入した場合は、12ヵ月も使用していない場合が考えられます。
その時は、使用した期間分を月割り計算する必要があるのですが、試験中は緊張していたり時間に追われて焦っていたりするため、数え間違いが非常に多くなります。
頭の中だけで数えようとせず、指を折ってゆっくり数えたり、タイムテーブルを簡単に計算用紙へメモすることでミスが減りますので実践してみて下さい。
必ず試験に出題されると分かっている「減価償却」について、苦手意識を持たないために充分な練習と対策をしておきましょう。